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国内のドローン規制 Published on 2021/04/30

危険物輸送承認手続

航空法には無人航空機を飛行させる空域や飛行させる方法などについて制限がされています。
この制限の対象となる空域や方法で飛行させるためにはあらかじめ承認を取得しなくてはなりません。
そこで今回は、無人航空機を飛行させる「方法」の制限の中で、「無人航空機により爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で国土交通省令で定めるものを輸送しないこと」について紹介していきます。

今回のポイントは以下の3点です。
・危険物とは、法律や告示に規定されているものを指す。
・危険物に該当するかどうかは、同じ物質でもさまざまな条件によって異なる。
・承認申請は管轄の地方航空局長に対して、飛行開始予定日の10開庁日前までに申請しなければならない。

 

現在の規制

爆発性を有する物件や他人または物に危害を与える恐れのある物件を無人航空機で輸送する場合、無人航空機が故障等によって落下してしまえば、人やモノに危害を加えてしまう可能性が高くなってしまいます。この理由から、無人航空機で危険物等を輸送することは原則として禁止されており、地方航空局長の承認が必要になるのです。国土交通省は「無人航空機には、既に数 kg~10kg の物件を輸送する能力を有するものもあり、火薬類、高圧ガス、引火性液体等の危険物を輸送することが十分に可能であるところ、これらの物件を輸送する無人航空機が墜落した場合や輸送中にこれらの物件が漏出した場合には、周囲への当該物質の飛散や機体の爆発により、人への危害や他の物件への損傷が発生するおそれがあるため」原則として危険物輸送を禁止していると示しています(令和元年8月 23 日 改正(国空安第 132 号、国空航第 1014 号、国空機第 635 号)。

規制の根拠法、内容

危険物輸送を禁止している法令の規定を見ていきましょう。
航空法(132条の2)では次のように規定されています。

「無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。
9 当該無人航空機により爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で国土交通省令で定めるものを輸送しないこと。」

すなわち、無人航空機を飛行させる者は危険物を輸送してはならないと規定されています。そして、そのような方法で無人航空機を飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないことについて地方航空局長の承認が得られた場合には、イベント上空で飛行させることができます(132条の2 2項及び137条1項)。

では、具体的にどのような場合が危険物輸送に該当するのでしょうか。
航空法施行規則236条の7によると

1 火薬類 火薬、爆薬、火工品その他の爆発性を有する物件
2 高圧ガス 摂氏50度で絶対圧力300キロパスカルを超える蒸気圧を持つ物質又は摂氏20度で絶対圧力101.3キロパスカルにおいて完全に気体となる物質であって、次に掲げるものをいう。
イ 引火性ガス 摂氏20度で絶対圧力101.3キロパスカルにおいて、空気と混合した場合の爆発限界の下限が13%以下のもの又は爆発限界の上限と下限の差が12%以上のもの
ロ 毒性ガス 人が吸入した場合に強い毒作用を受けるもの
ハ その他のガス イ又はロ以外のガスであつて、液化ガス又は摂氏20度でゲージ圧力200キロパスカル以上となるもの
3 引火性液体 引火点(密閉式引火点測定法による引火点をいう。以下同じ。)が摂氏60度以下の液体(引火点が摂氏35度を超える液体であって、燃焼継続性がないと認められるものが当該引火点未満の温度で輸送される場合を除く。)又は引火点が摂氏60度を超える液状の物質(当該引火点未満の温度で輸送される場合を除く。)
4 可燃性物質類 次に掲げるものをいう。
イ 可燃性物質 火気等により容易に点火され、かつ、火災の際これを助長するような易燃性の物質
ロ 自然発火性物質 通常の輸送状態で、摩擦、湿気の吸収、化学変化等により自然発熱又は自然発火しやすい物質
ハ 水反応可燃性物質 水と作用して引火性ガスを発生する物質
5 酸化性物質類 次に掲げるものをいう。
イ 酸化性物質 他の物質を酸化させる性質を有する物質であって、有機過酸化物以外のもの
ロ 有機過酸化物 容易に活性酸素を放出し他の物質を酸化させる性質を有する有機物質
6 毒物類 次に掲げるものをいう。
イ 毒物 人がその物質を吸入し、皮膚に接触し、又は体内に摂取した場合に強い毒作用又は刺激を受ける物質
ロ 病毒を移しやすい物質 病原体及び病原体を含有し、又は病原体が付着していると認められる物質
7 放射性物質等 放射性物質(電離作用を有する放射線を自然に放射する物質をいう。)及びこれによって汚染された物件(告示で定める物質及び物件を除く。)
8 腐食性物質 化学作用により皮膚に不可逆的な危害を与える物質又は漏えいの場合に無人航空機の機体、積荷等に物質的損害を与える物質
9 その他の有害物件 前各号に掲げる物件以外の物件であって人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれのあるもの(告示で定めるものに限る。)
10 凶器 鉄砲、刀剣その他人を殺傷するに足るべき物件

「7 放射性物質等 放射性物質(電離作用を有する放射線を自然に放射する物質をいう。)及びこれによって汚染された物件(告示で定める物質及び物件を除く。)」の定めの「告示で定める物質及び物件」は以下のように定められています(航空機による放射性物質等の輸送基準を定める告示 平成十三年六月二十六日国土交通省告示第千九十四号)。

すなわち以下の物質および物件は危険物に該当せず、承認なく輸送することができます。

・放射能濃度が別表第二、別表第四、別表第五又は別表第六の第一欄の放射性物質の種類又は区分に応じ、それぞれ当該各表の第四欄(別表第五及び別表第六にあっては、第三欄)に掲げる数量(以下「免除濃度」という。)未満のもの
・一の荷送人により輸送物を運搬するにあたり、当該輸送物全てに含まれる放射能の総量が別表第二、別表第四、別表第五又は別表第六の第一欄の放射性物質の種類又は区分に応じ、それぞれ当該各表の第五欄(別表第五及び別表第六にあっては、第四欄)に掲げる数量未満のもの
・天然に存在する放射性物質を含む鉱石等(加工されたものを含む。)であって、かつ、当該鉱石中に含まれる放射性物質の放射能濃度が当該放射性物質の免除濃度の十倍を超えないもの
・放射性物質が含まれる製品であって、国土交通大臣が適当と認めるもの
・放射性物質以外の固体であって、表面が放射性物質によって汚染されたもののうち、その汚染の度合が、次の表の上欄に掲げる放射性物質の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる放射能面密度を超えないもの

アルファ線を放出する放射性物質のうち低危険性のもの以外のもの 0.04ベクレル毎平方センチメートル
アルファ線を放出しない放射性物質及びアルファ線を放出する放射性物質のうち低危険性のもの 0.04ベクレル毎平方センチメートル

 

「9 その他の有害物件 前各号に掲げる物件以外の物件であって人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれのあるもの(告示で定めるものに限る。)」の定める「告示で定めるもの」は以下のように定められています(航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示 昭和五十八年十一月十五日運輸省告示第五百七十二号)。

すなわち以下の物質および物件は危険物に該当し、輸送するには承認が必要になります。

・亜鉛ハイドロサルファイト
・亜ジチオン酸亜鉛
・アスベスト (角閃石のもの) (アモサイト、透角閃 石、陽起石、直閃石、 クロシドライト)
・アスベスト (クソタイルのもの)
・1-アミノエタノール
・安全装置 (電気により作動するもの)
・遺伝子組替え生物
・遺伝子組替え微生物
・貨物輸送ユニットに設置されたリチウム電池 (リチウムイオン電池 又はリチウム金属電池)
・貨物輸送ユニット (くん蒸されたもの)
・空容器 (廃棄されるものであって、洗浄されていないもの)
・環境有害物質(液体)
・環境有害物質(固体)
・機械(内燃機関のもの)
・機械、危険物を内蔵するもの
・キャパシタ (電気二重層)
・キャパシタ (非対称型)
・救急キット
・救命器具 (非膨張式のものは、 装置に危険物が内蔵されているもの)
・救命器具 (膨張式のもの)
・魚粉 (安定剤入りのもの)
・高温輸送物質(液体)(100℃以上であって引火点を超えない温度で輸送されるもの(溶融金属類及び溶融塩類を含む。))(他に品名が明示されているものを除く。)
・高温輸送物質(固体)(240℃以上の温度で輸送されるもの)(他に品名が明示されているものを除く。)
・航空規制液体(他に品名が明示されていないもの)
・航空規制固体(他に品名が明示されていないもの)
・魚くず(安定剤入りのもの)
・磁気材料
・ジブロモフルオロメタン
・車両(引火性液体を燃料とする燃料電池を動力源とするもの)
・車両(引火性液体を燃料とするもの)
・車両(引火性ガスを燃料とする燃料電池を動力源とするもの)
・車両(引火性ガスを燃料とするもの)
・車両等(蓄電池を動力とするもの)
・装置(蓄電池を動力とするもの)
・装置類、危険物を内蔵するもの
・ドライアイス
・ドライアイス(固形二酸化炭素)
・内燃機関
・ニッケル水素電池
・日用品
・発熱する物品及び電池機材(水中トーチ又はハンダ付け装置など偶発的に火災を引き起こす恐れのあるもの)
・ハロゲン化モノメチルジフェニルメタン(固体)
・ハロゲン化モノメチルジフェニルメタン(液体)
・ヒマの油かす
・ヒマのひき割り
・ヒマのフレーク
・ヒマの実
・物品(その他の有害物件を含有するもの)(他に品名が明示されているものを除く。)
・プラスチック成型用コンパウンド(塊状、シート状、縄状のものであって引火性蒸気を発生するもの)
・プラスチックビーズ(発泡成型用のものであって、引火性蒸気を発生するもの)
・ポリ塩化ビフェニル類(固体)
・ポリ塩化ビフェニル類(液体)
・ポリハロゲン化テルフェニル類(固体)
・ポリハロゲン化テルフェニル類(液体)
・ポリハロゲン化ビフェニル類(固体)
・ポリハロゲン化ビフェニル類(液体)
・リチウムイオン電池(リチウムイオンポリマー電池を含む。)
・リチウムイオン電池(リチウムイオンポリマー電池を含む。)(装置とともに包装されたもの)
・リチウムイオン電池(リチウムイオンポリマー電池を含む。)(装置に組み込まれたもの)
・リチウム金属電池(リチウム合金電池を含む。)
・リチウム金属電池(装置とともに包装されたもの)
・リチウム金属電池(装置に組み込まれたもの)

このような物件が危険物に該当し、これらを輸送するためには、地方航空局長の承認を得る必要があります。なお、「当該飛行に必要不可欠であり、飛行中、常に機体と一体となって輸送される等の物件は、航空法施行規則第 236 条の7第2項における無人航空機の飛行のために輸送する物件として、輸送が禁止される物件に含まれないもの」であると解されています。具体的には無人航空機の飛行のために必要な燃料や電池業務用機器(カメラ等)に用いられる電池、安全装備としてのパラシュートを開傘するために必要な火薬類や高圧ガスなどが該当します。これらを輸送する場合には承認を得る必要はありません(令和元年8月 23 日 改正(国空安第 132 号、国空航第 1014 号、国空機第 635 号)。

また無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領では、危険物輸送の承認のための審査基準が規定されています(※無人航空機の機能及び性能、無人航空機を飛行させる者の飛行経歴等、安全を確保するために必要な体制等とあわせて総合的に判断し、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認められる場合にはこの基準は当てはまりません)。

審査要領には、以下の基準が規定されています(航空局長「国空安企第 161 号、国空航第 1696 号、国空機第 576 号」)。

・機体について:危険物の輸送に適した装備が備えられていること。
・無人航空機を飛行させる者について:意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること。
・安全を確保するために必要な体制について:真に必要と認められる飛行であること。飛行させようとする経路及びその周辺を事前に確認し、適切な飛行経路を特定すること。飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。

 

必要な手続き

申請窓口

ドローンに関する航空法を管轄している行政機関は国土交通省ですが、航空法137条及び航空法施行規則240条40号の3により国土交通大臣の権限を地方航空局長に委任しております。
したがって、危険物輸送の承認申請は管轄の地方航空局長に対して行うことになります。

管轄はこちらから調べることができます。
https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000211.html

手数料

現在の法制度なら手数料等はかかりません。

審査期間

申請については、飛行開始予定日の10開庁日前までに申請しなければいけません。
最短で10開庁日で承認の取得ができます。
例:2月1日(月)に申請→2月14日(月)が最短の10開庁日になります。
※実証実験などの申請内容が高度な場合には審査に時間がかかります。

 

まとめ

今回は無人航空機の危険物輸送についての承認申請について紹介してきました。無人航空機の危険物輸送は第三者やモノに対する危険性との関係が深く、飛行の安全性が重要になりますのでしっかりと準備をして承認申請を行いましょう。

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