国家ライセンス取得後にすべきこと
はじめに
無人航空機の操縦者技能証明制度により、ドローンの操縦について国家ライセンス(一等操縦技能証明・二等操縦技能証明)を取得する方が増えてきました。
国家ライセンスを取得すれば、どこでも自由にドローンを飛行させることができるのでしょうか。国家ライセンス取得後にすべきことを確認していきましょう。
機体認証の取得
国家ライセンス取得後、まずは操縦する無人航空機について「機体認証」を取得しましょう(取得済みの場合は「飛行許可承認申請の有無」へ進んでください)。
なぜなら、第三者上空を補助者なしで目視外飛行を行う場合や一部特定飛行で許可承認を不要とするためには、「技能証明を受けた操縦者」が「機体認証を受けた無人航空機」を飛行させる必要があるからです。
国家ライセンスを取得しただけでは、ドローンを自由に飛行させることができるわけではないので注意が必要です。
特にこの部分については、国家ライセンス(一等操縦技能証明・二等操縦技能証明)、機体認証(第一種機体認証・第二種機体認証)、飛行におけるカテゴリーの関係が重要になりますので、後述の「飛行許可承認申請の要否」を参照ください。
ここでは、機体認証とその申請について確認します。
機体認証(第一種機体認証・第二種機体認証)とは、無人航空機の安全基準への適合性を担保する制度です。
型式認証を受けた機体であれば、機体毎に行う機体認証の際の検査の全部又は一部が省略されます。
なお、型式認定を受けていない自作機等では、機体認証の際の省略はないため、設計・製造過程・現状について、機体毎に全ての検査が必要になります。
機体認証の申請の流れは下記の通りです。
①申請(無人航空機の機体の設計者等や型式等の情報を入力し申請します)
②手数料の納付
③無人航空機の検査(国または登録検査機関が、申請された無人航空機が安全基準に適合しているか検査します。国又は登録検査機関の指示に従って対応する必要があります。)
④機体認証書の発行(検査に合格し、全ての手続きが完了後、機体認証書が発行されます)
なお、事前に無人航空機の登録が必要ですので、無人航空機の登録をしていない場合、まず無人航空機の登録を実施する必要があります。
「機体認証」と「無人航空機の登録」について、区別しておく必要があります。
無人航空機の登録をしていない場合
上記の通り、無人航空機の登録をしていない場合は、機体認証の前に「無人航空機の登録」をしましょう。
100g 以上の機体は、無人航空機の登録をする必要があります。登録されていない無人航空機を飛行させることはできません。
申請した機体の登録記号が発番されたら、機体への登録記号の表示に加え、リモートID機能を搭載しなければなりません。
無人航空機の登録の申請の流れは下記の通りです。
①申請(無人航空機の所有者・使用者の氏名、住所などの情報、機体の製造者・型式などの情報を入力(記入)し申請を行います)
②入金
③登録記号発行(手続き後、申請した無人航空機の登録記号が発行されます。登録記号を機体に記載する等の方法で表示する必要があります。)
④リモートID機器等への書込み(無人航空機の飛行前に、「DIPS APP – ドローンポータルアプリ」もしくは無人航空機の製造者が指定するスマートフォンアプリを用い、リモートID機器等に発信情報を書込む必要があります。ただし、リモートID機器等の搭載が免除される場合があります。)
飛行許可承認申請の要否
前述の通り、国家ライセンス(一等操縦技能証明・二等操縦技能証明)および機体認証(第一種機体認証・第二種機体認証)を取得している場合、飛行におけるカテゴリーによっては飛行許可承認申請が不要となるケースがあります。
あらかじめ「飛行許可承認申請の要否」を確認しておきましょう。下記、国土交通省の資料が参考になります。
また、国土交通省作成の飛行カテゴリーの決定フロー図と併せて飛行許可承認の申請の要否を確認するとわかりやすいです。
もちろん飛行許可承認が必要な飛行の場合、事前に飛行の許可・承認を受ける必要があります。
飛行マニュアルの作成
国家ライセンス(二等以上)および機体認証(第二種以上)により、飛行許可承認が不要となるケース(いわゆるカテゴリーⅡB)であっても、注意しなくてはならないことがあります。
それは、「飛行マニュアルの作成」です。すなわち、飛行許可承認の申請が不要になる場合であっても飛行マニュアルの作成が必要となります。
個別の飛行許可承認申請が必要となるケースでは、そもそも申請時に飛行マニュアルが必要となるので、飛行マニュアルを作成せずに飛行することを防ぐことができます。
そして、この飛行マニュアルは、無人航空機を飛行させる者が安全の確保に必要な事項を盛り込み、その内容や形式は、飛行の実態に即して作成し、これを遵守する必要があります。
航空局が公表している標準マニュアルを参考に、飛行実態に即した飛行マニュアルを作成することになります。
飛行計画の通報
そして、無人航空機を飛行させる際にすべきこととして、「飛行計画の通報」があります。
この制度は、無人航空機を特定飛行させる者が、事前に当該飛行の日時、経路などの事項を記載した飛行計画を国土交通大臣に通報する制度です。
無人航空機を飛行させる前に、他の無人航空機の飛行計画や飛行禁止空域等の確認を行い、自らの飛行計画を通報する必要があります。
なお、特定飛行ではない場合でも飛行計画の通報が推奨されています。
飛行計画の通報の流れは下記の通りです。
①無人航空機情報、操縦者情報の登録(飛行させる無人航空機の情報・操縦者の情報を登録します。既に登録をしている場合は不要です)
②他の無人航空機の飛行計画の確認(他の無人航空機との衝突・接近を防ぐため、飛行を予定している空域周辺について、他の無人航空機の飛行計画を確認します)
③空域情報の確認(飛行予定である空域周辺について、航空法・各地方公共団体が定める条例等による飛行禁止エリア、有人機の離着陸エリア等を確認します)
④飛行計画の通報(必要事項を入力、飛行計画を通報します。通報した飛行計画の変更・削除を行う場合、通報した飛行開始日時までに変更・削除します)
飛行日誌の記録と事故等の報告
飛行を実施した場合、「飛行日誌の記録」が必要になります。また、事故等の報告が必要になるケースもあります。
まず、飛行日誌の記録についてです。
無人航空機を飛行させる者は、特定飛行を行う場合、飛行日誌を記録する必要があります。また、当該飛行時に飛行日誌を携行する必要があります。
なお、特定飛行を行わない場合であっても、飛行日誌による記録が推奨されています。
飛行日誌の具体的な記録についてはこちらの記事を参照ください。
最後に「無人航空機の事故等の報告および負傷者救護義務」を確認しておく必要があります。
この制度は、無人航空機に関する事故または重大インシデントが発生した場合、当該無人航空機を飛行させる者が、ただちに飛行を中止し、負傷者を救護すると共に、当該事故または重大インシデントが発生した日時および場所などを国土交通大臣に報告しなければならない制度です。
「重大な事故」とは下記のケースです。
・無人航空機による人の死傷(重傷以上の場合)
・第三者の所有する物件の損壊
・航空機との衝突または接触
「重大インシデント」とは下記のケースです。
・航空機との衝突または接触のおそれがあったと認められるもの
・無人航空機による人の負傷(軽傷の場合)
・無人航空機の制御が不能となった事態
・無人航空機が発火した事態(飛行中に発生したものに限る)
これらの事故等発生時においては、操縦者が国土交通大臣に事故等の内容の報告を行う必要があります。
事故等の報告の流れは、下記の通りです。
①報告(事故等の発生日時・発生場所といった事故等の詳細の内容を入力し、必要に応じ状況がわかる写真等の資料を添付し報告します)
②報告書の確認・調整(提出された報告書は、提出先の航空局・地方航空局・空港事務所等で確認が行われます。報告内容の修正・追記が必要な場合は報告内容の変更の調整を行います。)
おわりに
今回は国家ライセンス取得後にすべきことを確認していきました。
機体認証、機体の登録、飛行許可承認申請、飛行マニュアルの作成、飛行計画の報告、飛行日誌の記録、事故等の報告および負傷者救護義務というように、国家ライセンス取得後にすべきことは多いです。
これらを今一度確認して、適法・適切な無人航空機の飛行を実践していくことが大切です。
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