空港周辺の許可
航空法には無人航空機を飛行させる空域や飛行させる方法などについて制限がされています。
この制限の対象となる空域や方法で飛行させるためにはあらかじめ許可を取得しなくてはなりません。
そこで今回は、無人航空機を飛行させる空域の制限の中で、無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域について紹介していきます。
今回のポイントは以下の3点です。
・有人航空機の離着陸との関係から、無人航空機は告示等で規定されている空域での飛行はできず、飛行させるためには許可が必要になる。
・許可を取得するためには灯火を装備するなどの要件があり、飛行場によっても要件が異なるため確認する必要がある。
・許可申請は管轄の空港事務所長に対して、飛行開始予定日の10開庁日前までに申請しなければならない。
現在の規制
規制の背景
操縦者が無人航空機による航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある飛行を禁止している理由は、航空機(人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船など)の離着陸と深く関係しています。
航空機は離着陸するために高度の低い位置を飛行しています。その状況では無人航空機と衝突してしまう可能性が高まります。航空機と無人航空機が衝突することで重大な事故が起きてしまうことは容易に想像できると思います。よって特に航空機との衝突が起きやすい空域として指定されている場所では、無人航空機の飛行を原則禁止する必要があり、許可を取得する必要があるのです。
規制の根拠法、内容
航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある飛行を禁止している法令の規定を見ていきましょう。
航空法(132条)では次のように規定されています。
「何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。ただし、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
1無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域」
そして省令では、無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域について
「一 航空機の離陸及び着陸が頻繁に実施される空港等で安全かつ円滑な航空交通の確保を図る必要があるものとして国土交通大臣が告示で定めるものの周辺の空域であって、当該空港等及びその上空の空域における航空交通の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域
二 前号に掲げる空港等以外の空港等の周辺の空域であって、進入表面、転移表面若しくは水平表面又は法第五十六条第一項の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域
三 法第三十八条第一項の規定が適用されない飛行場(自衛隊の設置する飛行場を除く。以下同じ。)の周辺の空域であって、航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域」と規定されています。
そして、省令(1号及び3号)に規定されている告示の規定は次のようになっています。
新千歳空港:進入表面、転移表面若しくは水平表面の上空の空域、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域
成田国際空港:進入表面、転移表面若しくは水平表面若しくは法第五十六条第一項の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域
東京国際空港:進入表面、転移表面若しくは水平表面若しくは法第五十六条第一項の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域
中部国際空港:進入表面、転移表面若しくは水平表面若しくは法第五十六条第一項の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域
関西国際空港:進入表面、転移表面若しくは水平表面若しくは法第五十六条第一項の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域
大阪国際空港:進入表面、転移表面若しくは水平表面若しくは法第五十六条第一項の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域
福岡空港進:入表面、転移表面若しくは水平表面若しくは法第五十六条第一項の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域
那覇空港:進入表面、転移表面若しくは水平表面若しくは法第五十六条第一項の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域
三沢飛行場:次に掲げる平面の上空の空域
(1)第一図のうち、イ、ロ、ハ、ニ及びイの各点を順次に結んだ線で囲まれた三沢飛行場の標点(北緯四十度四十二分十一秒、東経百四十一度二十二分六秒(標高三十六メートル))を含む水平面(以下「A平面」という。)の短辺(イロ及びハニ)に接続し、かつ、水平面に対し上方へ五十分の一のこう配を有する平面であって、その投影面がイ、ロ、ヘ、ホ及びイ並びにハ、ニ、チ、ト及びハの各点をそれぞれ順次に結んだ線で囲まれた台形の区域と一致するもの(以下「B平面」という。)
(2)第一図のうち、三沢飛行場の標点の垂直上方四十五メートルの点を含む水平面のうち、この点を中心として半径四千メートルで描いた円周(リの線)で囲まれた部分(以下「C平面」という。)
(3)第一図のうち、B平面の斜辺(イホ’及びニチ’並びにロヘ’及びハト’)を含む平面及びA平面の長辺(イニ及びロハ)を含む平面であって、A平面の長辺を含む鉛直面に直角な鉛直面との交線の水平面に対するこう配がB平面又はA平面の外側上方へ七分の一であるもののうち、B平面の斜辺を含むものと当該斜辺に接するA平面の長辺を含むものとの交線(イタ及びニヨ並びにロル及びハヲ)、これらの平面とC平面を含む平面との交線(レタ、タヨ及びヨカ並びにヌル、ルヲ及びヲワ)及びB平面の斜辺(イレ及びニカ並びにロヌ及びハワ)又はA平面の長辺(イニ及びロハ)により囲まれる部分
第一図(国土交通省)
木更津飛行場:次に掲げる平面の上空の空域
(1)第二図のうち、イ、ロ、ハ、ニ及びイの各点を順次に結んだ線で囲まれた木更津飛行場の標点(北緯三十五度二十三分五十四秒、東経百三十九度五十四分三十五秒(標高三メートル))を含む水平面(以下「D平面」という。)の短辺(イロ及びハニ)に接続し、かつ、水平面に対し上方へ四十分の一のこう配を有する平面であって、その投影面がイ、ロ、ヘ、ホ及びイ並びにハ、ニ、チ、ト及びハの各点をそれぞれ順次に結んだ線で囲まれた台形の区域と一致するもの(以下「E平面」という。)
(2)第二図のうち、木更津飛行場の標点の垂直上方四十五メートルの点を含む水平面のうち、この点を中心として半径三千メートルで描いた円周(リの線)で囲まれた部分(以下「F平面」という。)
(3)第二図のうち、E平面の斜辺(イホ’及びニチ’並びにロヘ’及びハト’)を含む平面及びD平面の長辺(イニ及びロハ)を含む平面であって、D平面の長辺を含む鉛直面に直角な鉛直面との交線の水平面に対するこう配がE平面又はD平面の外側上方へ七分の一であるもののうち、E平面の斜辺を含むものと当該斜辺に接するD平面の長辺を含むものとの交線(イタ及びニヨ並びにロル及びハヲ)、これらの平面とF平面を含む平面との交線(レタ、タヨ及びヨカ並びにヌル、ルヲ及びヲワ)及びE平面の斜辺(イレ及びニカ並びにロヌ及びハワ)又はD平面の長辺(イニ及びロハ)により囲まれる部分
第二図(国土交通省)
岩国飛行場:次に掲げる平面の上空の空域
(1)第三図のうち、イ、ロ、ハ、ニ及びイの各点を順次に結んだ線で囲まれた岩国飛行場の標点(北緯三十四度八分四十二秒、東経百三十二度十四分四十九秒(標高三メートル))を含む水平面(以下「G平面」という。)の短辺(イロ及びハニ)に接続し、かつ、水平面に対し上方へ五十分の一のこう配を有する平面であって、その投影面がイ、ロ、ヘ、ホ及びイ並びにハ、ニ、チ、ト及びハの各点をそれぞれ順次に結んだ線で囲まれた台形の区域と一致するもの(以下「H平面」という。)
(2)第三図のうち、岩国飛行場の標点の垂直上方四十五メートルの点を含む水平面のうち、この点を中心として半径三千五百メートルで描いた円周(リの線)で囲まれた部分(以下「I平面」という。)
(3)第三図のうち、H平面の斜辺(イホ’及びニチ’並びにロヘ’及びハト’)を含む平面及びG平面の長辺(イニ及びロハ)を含む平面であって、G平面の長辺を含む鉛直面に直角な鉛直面との交線の水平面に対するこう配がH平面又はG平面の外側上方へ七分の一であるもののうち、H平面の斜辺を含むものと当該斜辺に接するG平面の長辺を含むものとの交線(イタ及びニヨ並びにロル及びハヲ)、これらの平面とI平面を含む平面との交線(レタ、タヨ及びヨカ並びにヌル、ルヲ及びヲワ)及びH平面の斜辺(イレ及びニカ並びにロヌ及びハワ)又はG平面の長辺(イニ及びロハ)により囲まれる部分
第三図(国土交通省)
無人航空機の飛行禁止空域等を定める告示(令和元年8月23日国土交通省告示第四百六十号)
また、2号で規定されている進入表面、転移表面若しくは水平表面及び国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域は以下のように規定されています。
進入表面
着陸帯の短辺に接続し、かつ、水平面に対し上方へ50分の1の勾配を有する平面であって、その投影面が進入区域と一致するもの。 進入区域とは、着陸帯の短辺の両端及びこれと同じ側における着陸帯の中心線の延長3,000mの点において中心線と直角をなす一直線上におけるこの点から600mの距離を有する2点を結んで得た平面をいう。(航空法第2条第8項)
水平表面
空港の標点の垂直上方45mの点を含む水平面のうち、この点を中心として半径4,000mで描いた円周で囲まれた部分。(航空法第2条第9項)
転移表面
進入表面の斜辺を含む平面及び着陸帯の長辺を含む平面であって、水平面に対する勾配が進入表面又は着陸帯の外側上方へ7分の1の平面でその末端が水平表面との接線になる部分。(航空法第2条第10項)
延長進入表面
進入表面を含む平面のうち、進入表面の外側底辺、進入表面の斜辺の外側上方(勾配50分の1)への延長線及び当該底辺に平行な直線でその進入表面の内側底辺からの水平距離が15,000mであるものにより囲まれた部分。(航空法第56条第2項)
円錐表面
円錐表面は、水平表面の外縁に接続し、かつ、水平面に対し外側上方へ50分の1の勾配を有する円錐面であって、その投影面が空港の標点を中心として16,500mの半径で描いた円周で囲まれるもののうち、航空機の離着陸の安全を確保するために必要な部分として指定された範囲。(航空法第56条第3項)
外側水平表面
円錐表面の上縁を含む水平面であって、その投影面が空港の標点を中心として24,000mの半径で水平に描いた円周で囲まれるもののうち、航空機の離着陸の安全を確保するために必要な部分として指定された範囲。(航空法第56条第4項)
(東京航空局)
これらの規定が根拠となって、航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある飛行は許可を取得する必要があるのです。
また無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領では、航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある飛行の許可のための審査基準が規定されています(※無人航空機の機能及び性能、無人航空機を飛行させる者の飛行経歴等、安全を確保するために必要な体制等とあわせて総合的に判断し、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認められる場合にはこの基準は当てはまりません)。
審査要領には、以下の基準が規定されています。
・航空機からの視認をできるだけ容易にするため、灯火を装備すること又は飛行時に機体を認識しやすい塗色を行うこと
・飛行を行う日の前日までに、その飛行内容について飛行する場所を管轄する空港事務所長等(以下「管轄事務所長等」という。)へ、以下の項目を通知すること。なお、予め管轄事務所長等から通知先を指定された場合には、指定された機関へ通知を行うこと。
a)飛行日時:飛行の開始日時及び終了日時
b)飛行経路:緯度経度(世界測地系)及び地名(都道府県名及び市町村名)
c)飛行高度:下限及び上限の海抜高度
d)機 体 数:同時に飛行させる無人航空機の最大機数
e)機体諸元:無人航空機の種類、重量、寸法、色 等
・日時及び空域を確定させて申請し許可を取得した場合には、申請内容に応じて航空情報を発行することとするため、飛行を行わなくなった場合には、速やかに管轄事務所長等に対し、その旨通知すること。
・新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、関西国際空港、大阪国際空港、福岡空港、那覇空港の進入表面及び転移表面の下の空域並びに敷地上空の空域の場合、空港等の運用時間外における飛行又は空港等に離着陸する航空機がない時間帯等での飛行であること。このため、空港設置管理者との調整を図り、了解を得ること。無人航空機を飛行させる際には、空港設置管理者と常に連絡がとれる体制を確保すること。飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。
・新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、関西国際空港、大阪国際空港、福岡空港、那覇空港のそのほかの空域の場合、空港等の運用時間外における飛行又は空港等に離着陸する航空機がない時間帯等での飛行であること。このため、空港設置管理者等との調整を図り、了解を得ること。無人航空機を飛行させる際には、空港設置管理者等と常に連絡がとれる体制を確保すること。飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。
・その他空港等における進入表面等の上空の空域又は航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域における飛行の場合、空港等の運用時間外における飛行又は空港等に離着陸する航空機がない時間帯等での飛行であること。このため、空港設置管理者等との調整を図り、了解を得ること。無人航空機を飛行させる際には、空港設置管理者等と常に連絡がとれる体制を確保すること。飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。
必要な手続き
申請窓口
ドローンに関する航空法を管轄している行政機関は国土交通省ですが、航空法137条及び航空法施行規則240条40号の2及び240条の2により国土交通大臣の権限を空港事務所長に委任しております。
したがって、航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある飛行許可申請は管轄の空港事務所長に対して行うことになります。
管轄はこちらから調べることができます。
https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000212.html
手数料
現在の法制度なら手数料等はかかりません。
審査期間
申請については、飛行開始予定日の10開庁日前までに申請しなければいけません。
最短で10開庁日で許可取得ができます。
例:2月1日(月)に申請→2月14日(月)が最短の10開庁日になります。
※実証実験などの申請内容が高度な場合には審査に時間がかかります。
まとめ
今回は無人航空機について航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある飛行の許可についての許可申請について紹介してきました。航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある飛行は有人航空機との関係が深く、飛行の安全性が重要になりますのでしっかりと準備をして許可申請を行いましょう。
グループ企業
株式会社ジーテック
https://gtech-inc.jp/
【サービス】
DIPコネクト
https://dips-connect.com/campaign/
MIRANOVA
https://www.miranova.jp/
お問い合わせ
academic worksでは、2015年12月の航空法改正以降、ドローンソリューションを提供する企業様、ドローンを利活用した実証実験を行う各自治体の法務サポートを行ってきました。
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